誠之堂・清風亭

 

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歴史・名前・概要 装飾について

清風亭の装飾

 

 清風亭の外観は、当時流行していたスペイン風の様式が採られています。
 西村自身は「南欧田園趣味を採用し、これを近代的な手法で建て、清楚な気分を表現することに努力した」という旨を記しています。
 左右対称性を基本に、直線的なラインの中にアーチなどの曲線が配される幾何学的なデザインと明るい白壁などからは、「清楚な気分」が強く伝わってきます。

●外観


■スパニッシュ瓦

スパニッシュ瓦

 屋根は、南欧風を印象づけるスパニッシュ瓦で葺かれています。やや離れた場所からでないとよく見えません。
 現在よく見られるスパニッシュ瓦(スペイン風瓦)は、オレンジ色のものが多いですが、清風亭では、青釉や緑釉のものが使われています。

■棟の装飾瓦

 棟先は、少し他とは違った瓦を用い飾られています。
 当時の設計資料には、この部分の飾りにブドウの房とリスの像が乗るものなども考えられていたことがわかりますが、最終的に、小さな渦巻きがあるだけの簡素なデザインが採用されました。

■煙突の装飾積み

 煙突にも、さりげなく装飾積みがあります。目路によりひし形の模様が作られています。

 ■スクラッチタイル

スクラッチタイル

 建物の角やアーチの縁を装飾しているのは、煉瓦ではなく「スクラッチタイル」です。
 昭和当初にはよく使われるようになった建材です。

■鼻黒煉瓦

鼻黒煉瓦

 ベランダや柱の足回りなどには、煉瓦でも特に色の黒い「鼻黒煉瓦」と呼ばれる煉瓦を用いて飾られています。
 スクラッチタイルとともに、白い壁にアクセントをつけています。

 

 

■ベランダアーチ

 正面のベランダと、5連のアーチは、印象的な部分です。
 スクラッチタイルによる縁どりで凹凸がつくられていますが、どれも同じ並びはなく、あえて左右対称を崩した部分をつくっています。

■樋の枡のセミ

 縦樋の飾枡には、銅板の打ち出しにより、セミの浮き彫が施されています。これもさりげない小さな装飾です。

 ちなみに軒先の樋は、軒の内側に溝が作られ、外から見えないよう工夫がされています。

■出窓

 平面的な壁に、ゆるやかな曲面の出窓がせり出し、アクセントをつけています。窓は、ベランダのアーチと連関するようにアーチ型の意匠が採られ、窓枠は円柱を模しているなど、興味深いデザインです。
 また、窓の周りは、幾何学的なステンドグラスで飾られています。

■柱頭の装飾

 柱頭の装飾は、ブドウの葉と実の彫刻です。

 円柱といえばギリシアの神殿を想像させますが、そのコピーではなく、独自のデザインによる装飾を用いています。

●内観


■暖炉

暖炉

 室内で、中心にあって目立つのは暖炉です。当初からの火除け板も残されています。
 創建当時には、暖炉上の壁に佐々木勇之助の肖像画がかけられていたことが、当時の写真からわかります。

■天井仕切の石膏彫刻

石膏彫刻

 天井の仕切り(天井蛇腹)には、石膏彫刻により唐草模様のブドウのつると果実がかたどられています。
 ブドウは、当時、「南欧風」を象徴する意匠だったのかもしれませんね。

 

 

■トイレ

 トイレには、当初からのブースなどが残されています。
 ブースの扉にはめられたガラスはモロッコガラスという表面をぎざぎざにしたものです。
 また、男子用トイレの仕切りは、天然スレート(玄昌石)の一枚板で作られています。

 

■出窓腰掛け

出窓の腰掛けも、木製彫刻で装飾されています。

 

 


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